聞き手・米田優人
刑事責任能力の有無や程度が争われる裁判は少なくない。そもそも刑事責任能力とは何なのか。なぜ、刑が軽くなるのか。誰がどうやって判断するのか。刑事法を専門とする大阪市立大の三島聡教授に聞いた。
Q刑事責任能力とは?
自分のした行為が適法なのか違法なのかを認識できる力、違法と認識した際に自分の意思でその行為を思いとどまる力、この二つを備えている時、「刑事責任能力がある」と言います。精神に障害があるために、この能力が完全にない状態を「心神喪失」、著しく低下した状態を「心神耗弱(こうじゃく)」と呼びます。刑法39条は、心神喪失の人がした違法行為は「罰しない」、心神耗弱の時は「刑を軽くする」と定めています。
Qなぜ、心神喪失だと無罪になるのか
刑罰は、科される人にとって重大な人権の制約です。どのような意思で他人を死亡させたり傷つけたりしたのかを抜きにして処罰することは許されません。不可抗力により、結果的に他人を死亡させたり傷つけたりした場合でも、刑罰を科してよい、とは誰も考えないでしょう。ですから、刑事責任能力が認められない限り、犯罪は成立しません。ただし、心神喪失の判断はきわめて厳格です。犯罪白書によると、2019年に、地裁・簡裁で心神喪失を理由に無罪となった人はわずか2人です。
心神喪失で無罪になった人は、重い精神障害があり、日常生活に支障があることから、強制入院・通院の制度が設けられています。医療観察法では、検察官が裁判所に申し立て、裁判官と精神科医が審理をして強制的に入院や通院をさせるべきかどうかを判断することになっています。
Q刑事責任能力の判断をする…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル